復興除染事業の意見書

2013-05-07

はじめに

東日本大震災で引き起こされた福島第一原子力発電所事故により各地に拡散した放射性物質で汚染された被災地の除染事業において様々な問題点が指摘され始めた。
現在の除染事業については、復興事業ではなく復旧事業、または被災地復興ではなく大手ゼネコン復興事業だと言う意見も出始めている。

現状と課題

放射性物質の除染事業による二次的な汚染や被爆を防ぐため、重要視しなければならない課題がある。

1)除染作業員の被爆リスクを軽減する

現在家屋の除染方法として、薄利剤を用いた拭き取りによる除染が各地で行われ始めている。
当初から行われていた高圧洗浄による家屋除染では、発生する汚染水の処理が問題になっている。
再生舎の行った放射能汚染水処理の実証試験で、高圧洗浄による家屋除染の汚染水放射線量は1,000Bqを超え、固液分離された固形化物(残渣物、含水率50%前後)の放射線量は100,000Bqを超えてしまうことから、水を使用しない拭き取り除染で発生する放射性廃棄物の放射線量は100,000Bqを超えると推測でき、作業員が被爆する可能性が大きい。
また拭き取ったペーパータオル等を焼却施設で燃焼処理している自治体も存在するようだが、8,000Bqを超えた放射性廃棄物については国の指定特別管理廃棄物となり、法律上「何人なりとも焼却してはならぬ」というルールがある。

2)移染による二次拡散を防ぎ、放射性物質による新たな被災地を出さない

家屋建造物や路面等の洗浄除染で発生する汚染水の処理問題が以前から指摘されている。
汚染物質の除染作業では、水で取り込み回収する事(水による希釈)が作業員の被爆リスクを軽減できる。そして適正な汚染水処理をし、排水または再利用する事が重要となる。
水は主流となる河川に流れ下流域へと移行するが、曖昧な水処理では汚染物質の拡散による二次汚染につながり、被災地の拡大となる。
福島県では阿武隈川の下流域に東北最大の都市である仙台市がある。現在実施されている曖昧な水処理により何れ宮城県へと被災地が増加することが考えられる。
二次汚染の拡散を防ぐためにも、汚染水の処理排水基準をより厳しいものにして適正な管理体制の元に汚染水処理を行う必要がある。
今後の除染事業は、現在の放射性被災地以外の下流域の自治体と連携を取り協議し適正な除染事業を構築する事が重要である。

最後に

除染事業が行われ始めて2年目となる平成25年度は、適正な管理体制の元で除染事業を行う事が重要となる。除染事業が被災地住民の新規事業になるような新たな除染工法を確立し、被災地自治体が独自の基準を設ける事を提言したい。
路面洗浄から発生するアスファルト成分中のPAH(多環芳香族炭化水素)やコンクリート建造物の洗浄から発生する六価クロム、家屋洗浄や薄利剤により発生する鉛等の重金属など、
現在実施されている除染基準は曖昧であり、今後発生する二次汚染問題として放射性物質以外の汚染が懸念される。
今後は下流域自治体と協議し、被災地自治体が独自に適正に管理処理を行える事業所を立ち上げるなど、雇用促進につながる事業構築を提言したい。

環境技術アドバイザー 細渕慈貴

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