放射能除染事業の早期見直しを望む

2013-08-15

共同通信社が平成25年7月12日に発信した日本国土開発が行った農業用水路への汚染水流出事件は、内閣府から委託を受け日本原子力研究開発機構が発注(2011年~2012年発注)した「放射能除染実証モデル事業」に対する重大な違法行為であり、国土復興を期待する被災地住民や日本国民を裏切る行為と言わざるを得ない。

日本国土開発は、共同通信社からの取材依頼を受けたNPO法人再生舎の回答に対し、“守秘義務を守れない企業は除染をする資格がない”などとネット上に掲載しているようであるが、違法行為に対しての内部告発は認められるべきであり、この意味でも守秘義務遵守云々は論外である。

除染実証モデル事業は、今後の震災復興除染事業の方向性を示すモデル事業とならなければならないもので、企業倫理が欠落した国土開発こそ除染事業を行う資格はないと言える。

原発事故で福島を始め周辺地域に拡散された放射性物質は、発表によれば105京ベクレルという膨大な量である。このような背景の中、除染実証モデル事業や、現在行われている除染事業では、除染によって回収された放射性物質の量を明確にしていない。本来、被災地住民や事業費を負担している国民に対して事業の除染成果として、回収された放射線総量を開示する義務があるはずである。

国土開発は、家屋や路面洗浄汚染水の放射線量の殆どが200 Bq/L以下であったとしている。これが事実だとすれば、洗浄除染を行うだけの技術を持っていなかった事の証明とも言える。

平成23年に行われた除染実証モデル事業は、放射線量が高いとされている立ち入り禁止区域内で行われており、またこの事業は原発事故から約10ヶ月経過した時期に実施されたものである。その結果として、国土開発は排出された洗浄除染水の殆どの放射線量は200 Bq/L以下だったと公表した。

その後、南相馬市の被災地住民の復興への強い志により立ち上げられた除染組合は、平成24年6月に立ち入り禁止区域外である原町区の高倉公会堂とハートランド内の除染実証試験を独自に行った。この実証実験において、公会堂の洗浄で生じた除染水は1000 Bq/Lを超え、除染水を浄化処理した後に回収された放射性物質含みの残差物は10万 Bq/kgを超える放射線量であるとの結果が出た。

高倉公会堂は、除染実証モデル事業区域より放射線量が低いにも係らず、洗浄回収された汚染水の放射線量は、大手ゼネコンの技術の粋を集めた除染の結果よりも高い放射線量を記録したことから、ゼネコンの除染よりも早期復興を志す被災地住民が興した除染組合が行った除染工法の方が高精度の除染効率を示すことが明確になった。

言うまでもなく、除染技術のレベルが低く、且つ利益重視のゼネコン等への除染事業の発注は速やかに見直されるべきである。一日も早い国土の復興を実現するためにも、故郷の復興を志す被災地住民による「真摯且つ信念のある除染への要望」に目を向け、除染で回収された放射性物質の総量を管理できる被災地の技術工法に除染事業を移行させていく必要があるのではないだろうか。

特別措置法を改正し、除染技術の高い企業や地元組合等に委託発注される体制が作られる事が、被災地住民と除染事業費を負担する国民の強い要望であることは言うまでもない。

特定非営利活動法人 再生舎
理事長 臼井 健介

特定非営利活動法人 再生舎
環境技術アドバイザー 細渕 慈貴

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