汚染水排水に関する意見書

2013-07-14

東日本大震災に伴って起きた福島第一原子力発電所事故により、福島県及び周辺地域に飛散した放射性物質は国土を消失させてしまいました。

失われた国土を取り戻し、避難を余儀無くされてしまった被災地国民を一日も早く帰郷出来る様にする為に除染事業が行われています。

放射性物質による国土損失は、想定外の事態であり、放射性物質を一日も早く取り除き安心な国土を取り戻す為に実証モデル除染事業や実証実験が行われたはずです。

政府を始め国民は、名だたるゼネコン、企業、研究機関が行う除染実証モデル事業により国土を取り戻せる事を信じ、その結果に期待しました。

除染実証モデル事業が、想定外の原発事故による放射性物質を取り除き回収し国土を取り戻す事が前提とした事業であるならば、実証モデル事業の中で捕捉し得た放射性物質は全て回収し、これを適正に保管する事を目的としなければならないはずです。

また、放射性物質の様に生態系に影響を及ぼす事が認識されている物質の廃棄に関しては、法律や条例だけではなく、避難を余儀無くされた地元住民の意向を最も重要なものとするべきです。そして、今回の様に地元住民の意向を問うことなく排水や廃棄が実施されたことは、「全ての国民が平等に安全で安定した生活を手にし得る事」を目的とした国策に反していると言えるでしょう。

この度報道された「除染により生じた汚染水の排水」は、避難を余儀なくされた住民がそこにいない事を良い事に、住民の意思が問われることなく行われた悪質な流出移染行為と言えます。

今回の除染事業においては、法律規制が無い事を逆手に取る様な行為を環境を守る立場であるべき省庁が黙認したという事実も、国民が平等な生活を送る権利を蔑ろにしていると受け取らざるを得ません。

本来、洗浄が主体となる事業で有れば、放射性物質が付着した構造物を洗浄して生じた汚水は極力回収し、暫定基準値に対する放射性物質の濃度の多寡に関わらず全てを安全に処理する義務があるはずです。

例えば、個人が自ら行う営利を目的としない洗車や洗浄は仕方ないとして、営利を目的とした高速洗車場等は、油水分離槽と沈砂槽を経て洗車で生じる油と泥を回収する処理が施されてから排水されます。

これは営利を目的とした事業の特定施設においては、必ず必要とされる処理工程です。しかし、除染事業は営利を目的として行われているにも関わらず、「除染の現場は特定施設にあたらず、該当する法的規制が無いから無処理で排水しても良い」として省庁や自治体、除染事業企業は高圧洗浄水を無処理のまま側溝に排水しました。

このような行為は、避難を余儀無くされている被災地住民や復興費用を負担している国民を無視した利己的なものであり、同様の行いが見過ごされている状況を一日も早く改善しなければ、安全で安心出来る日本の国土を取り戻す事はかなわず、日本国民の「平等な権利」がいつまでも損なわれ続けられることになるでしょう。

NPO法人 再生舎
環境技術アドバイザー 細渕慈貴

Print Friendly, PDF & Email
再生舎への寄付のお願い
Copyright(c) 2012 再生舎 All Rights Reserved.